スロベニア人が使用してきた最も古い家具

スロベニアの習慣

スロベニアは長い間、19世紀までは、多くの家庭が農業を営んでおりまさに「農家」でありました。その暮らしは質素で、当時のおうちの様子、家具、デコレーション、小物、衣装、仕事で使った用具といった目に見える有形ものや、音楽、祝日、歌と行った無形のものから当時の暮らしや人々の哲学が見えてきます。

今日は、その一つ、スロベニアで最も古くよく使われてきた家具、スクリニャ(Skrinjać:スロベニア語 Chest :英語)を紹介します。

スクリニャとは?

スクリニャは、長い長方形の箱で、基本的には物を保存する用具として使用されていました。保存するものは、衣類、食料、高価なもの、書類、寝具などいろいろで、この家具は花嫁道具の一つでもあったのです。

中世から19世紀までスロベニアで使用されてきており、特に農家の家にはなくてはならないものでした。というのも、当時、19世紀までは家族みんなが座れるイス、眠れるベッド、衣類などをしまうクローゼットなどを所有する家族は稀で、このスクリニャは時にイス、時にベッド、そしてクローゼットの役割を果たしていたのです。

Skrinjaという言葉は、有形無形の希少なものを入れることができるスペース、という意味もありますし、この箱がいっぱいになっていることは、豊かさの象徴でもあったんですね。

スクリニャの製法

スクリニャは木製です。作られた当時はノコギリなどなく、手斧で木を切り、うまく組み合わせて箱型に作りました。だんだんと用具が発展するに連れ、のこぎりで作ったり、しっかり守るための鍵が取り付けられるようになりました。

箱の上の蓋も真っ平らなものから、おうちの屋根のような仕上がりのものまでそのデザインは変化します。保存しているものを守るために、鍵もついていました。

また、装飾面でも、最初はシンプルなものでしたが、次第に表面を彫刻のように彫ったり、象嵌細工を施したり、油絵の具で絵を書くなどして華やかに装飾されるようになります。したがって、このスクリニャを見ても技術や芸術の発展の様子を見て取れるわけですね。

女性とスクリニャ

スロベニアの人たちは、用途ごとにこのスクリニャを使い分けていました。例えばシンプルなつくりのものは食料などの日用品、装飾されているものは高価なものをいれていました。また装飾されている箱に年が書いてあるものは、結婚した年を表しています。これはŽenitovanje skrinja と呼ばれていて、花嫁道具の大事な一部だったんです。

中世近代の花嫁道具

花嫁道具のスクリニャにも様々な用具を入れるわけですが、この場合はとりわけ華やかに装飾されます。油絵の具で華やかなモチーフを描いたり、彫刻風に施されますが、花嫁やその家族(費用を出すわけですから)の意向に沿って製作されます。嫁ぎ先へ引っ越すときは、村の男性や男の子たちが運ぶのを手伝ってくれました。これは立派な当時の習慣なんですよ。新しい人生の始まりをお祝いする意味もあったのですね。

しかし人はこのイベントを祝福ムードで見るわけですが、このスクリニャのサイズ、装飾度合い、数などを見て、花嫁の家族の資産を計算できちゃうわけです。

そして家にあるスクリニャには、家族の「財産・資産」を保存することになりますが、その管理も女性の仕事でした。農家の家には、「椅子は男性に、鍵は女性」に渡る習慣があったからです。当時から女性は楽せず、しかしながら家の財産を守り、コントロールする権限があったんですね。

スクリニャが伝える物語

一つの箱をとっても、年代によってデザインが違っていたり、技術の発展が見て取れます。また、地域によってもデザインや装飾の傾向があります。そして、村の習慣もわかるんですね。家具一つでも多くのことを伝えてくれます。

この他にも、スロベニア人の日々の生活に関わっているものが展示されているスロベニア民族博物館は、必見です。

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